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を試みますが、鎖同政策をとっていた江戸幕府は帰国を認めず、日本へは再び帰ることはできませんでした。
彼らが、漂着した後に初めに保護された米国ワシントン州フォート・バンクーバーを5月の週末を利用して訪ねて見ました。フォート・バンクーバーは、当時、ハドソンベイ会社の西海岸の拠点となっていた地で、周りを丸太で囲まれた砦が、当時と同じコロンビア川の河畔に再現され、公園となっていました(写真-3)。ここは、原住民との毛皮等交易の場所であったようです。訪れた日には、たまたま、当時の砦での生活様式が町のボランティアによって再現されていました。砦の中では、日本人が保護されていた痕跡を見つけることはできませんでしたが、公園の案内所で、我々が日本人であることがわかると、昔ここに日本人が流れ着いたという話とその事実が記されたパンフレットを渡されました。また案内所の入り口近くには、その事実を記念する碑がありました。彼らの足跡、運命は、三浦綾手の小説「海嶺」の中で詳しく描かれています。
海洋研究に携わる者として興味があるのは、彼らが一体どのような経路で太平洋を14か月かけて漂流したのかということです。当時の北太平洋の循環を知る手掛かりとなるかも知れません。おそらく、遠州灘で遭難し黒潮により三陸沖に運ばれた後、北太平洋海流にのって太平洋を横断し、北米に近づいた後、カリフォルニア海流により少し南下し、ワシントン州からブリティシュコロンビア州に沿って北向きに流れる沿岸流により少し北上し、オリンピック半島に漂着したものと推測されます。彼らが身をもって体験した海洋における循環を世界中の

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写真-3フォート・バンクーバーの砦

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図-4 太平洋の海洋循環図(Pickard著Descriptive Physical Oceanographyより)

 

 

 

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